
| 前日に降り積もった雪が町のあちこちに残る一月十日、第十回のころねっとセミナーが開かれました。当初、予定していた加藤先生のご都合が悪くなり、前回の講師、西村良子先生にご講演をお願いしたところ、快く引き受けていただけました。担当者一同、たいへん感謝しています。西村先生、本当にありがとうございました。今回は、ある事例をもとに心の回復に関するお話をしていただきました。 |
| 事例については、本人の承諾がなければ人前でお話しすることができません。これからお話しすることは、本人の承諾を得て、以前にある学会で報告した事例です。 対人恐怖症の女性の話です。その女性……仮にMさんとしましょう……が、ある男性と出会って結婚し、二人の娘さんをもうけました。一人目のときはよかったのですが、二人目の娘さんが生まれたときにパニックを起こしました。その後、娘がいるにもかかわらず、Mさんは寝てばかりいたそうです。娘の世話とか、家事は、義理のお母さんが手助けしていました。 やがて、二番目の娘さん……Yちゃんとしましょう……が幼稚園に入ったとき、緘黙だということが分かったのです。Yちゃんは、場面緘黙といって、身近な人とは話ができるのですが、幼稚園では全く話ができません。緘黙になる子は、家庭で大事にされていないことが多いのですが、幼稚園や児童相談所では、「内気なんでしょう」ということで、重要視されませんでした。 Yちゃんのように緘黙の子は、動作がスムーズではありません。また、プレイルームでは、散らかし放題で、荒々しいことをするので、みんなが眉をひそめ、その子と接する人は、たいへん疲れ果ててしまうんです。 でも、Yちゃんは自閉症の子とは違って、人とは関わりを持ちたいと思っているのです。Yちゃんは、プレイセラピーを続けていくうち、水遊びをしていて、先生にバスタオルを差し出すような優しい行為をするようになりました。そんな形で、しだいに物や人を大事にできるようになってきたのです。 Yちゃんは、小学校のときには登校拒否をしていましたが、中学校には行く意欲を表しました。そのとき、国立大の附属中学に進学しようと試験を受けたのです。その面接試験のときに、なぜか緘黙が治ったのです。試験は不合格でしたが、地元の中学校に進み、今では高校生として、元気にくらしています。Yちゃんが変わるきっかけとなった出来事について話しましょう。Yちゃんのお母さんのMさんは、夢分析をしていました。あるとき、Yちゃんが、オムツの中にウンチをした夢を見て、そのことをYちゃんに話したそうです。Yちゃんが「わあ、きたない」と言うと、Mさんは「そんなことないよ。Yちゃんのウンチ、きたなくなんかないよ。かわいいおしりをタオルでふいてあげたんだよ」と答えたところ、Yちゃんは繰り返しその話を聞きたがったということです。私は、この母子と出会ってからずいぶん経ちますが、この夢に関する話が画期的なことだと思います。 Mさんは、小さいころから、川の中に引き込まれる夢をよく見ていたそうです。その川は、Mさんの母親の象徴で、怖い母親が自分を思い通りに引きずり回すことの表れだと思います。Mさんの父親は、夢の中ではクモとして現れ、それは性的な悪い存在です。その両親がMさんのところへやってきたときに、恐れていたパニックが起きなかったので、Mさんは自分が対人恐怖で悩んでいることを母親に話しました。すると、母親はMさんに対して理解を示し、一緒にカウンセラーを訪問しました。その後、Mさんは、生協の活動に関わるようになり、その仲間と少しずつ話ができるようになりました。そして、あるとき本屋さんでアルバイトを始めようと決心しました。職場の人たちとの付き合い方もぎこちなかったんですが、七、八年後には職場の人たちと旅行に行けるほどになりました。 このような事例は、特殊な話で参考になるかどうか分かりませんが、重い症状でも回復するチャンスがあることを教えてくれています。 |
(文責・編集部) |