
| 第十一回のころねっとセミナーは、あらたまクリニックの院長で精神科医の加藤正先生を講師にお招きして、二月十四日に女性会館で開かれました。前回までのころねっとセミナーでは、いずれもカウンセラーの方のお話を伺ってきましたが、今回初めてお医者さんのお話を伺うことができました。今回のテーマは、「AC、トラウマ、家族」です。 |
| 皆さんご存じのように、ACとはアダルトチルドレンのことです。ACが社会的に注目されたのは、ACムーブメントと呼ばれている様々な活動があったからです。 ACの元をたどっていくとアメリカでアルコール依存症の家庭で育った子どもに着目した研究につながります。一九六九年に出版されたマーガレット・コークの『置き去りにされた子どもたち』はその先駆的なもので、アルコール依存症の家庭で親の役割をしている子どものことが、大海に漂う舟に乗ってバランスを保つのに必死な状態に例えて書かれています。その後、一九八三年になって、『ACOA』という本が出版され、ACという言葉が使われるようになりました。 アメリカ合衆国は個人主義の国なので、すべての責任は個人にあるとされています。そのアメリカで、「あなたが行き詰まってしまったのは、あなたのせいではない」と言ったので、その影響力は日本よりも大きなものになりました。子どもの頃に不健全な家庭で身に付けた役割が、健全な暮らしをしていく上ではマイナスの要因になることがあるのです。 不健全な家庭で育った人が配偶者を選ぶとき、不健全な人を選ぶ傾向があります。ヒーロータイプの人は、全く駄目な人か完璧だという人(アルコールや薬物依存、摂食障害の人)に惹かれます。それから、世話焼きタイプの人は、未熟な人(世話を必要とする人)を配偶者に選びます。また、ピエロタイプの人は、周りを喜ばせることで自分の存在を示します。透明人間タイプは、自分の欲望を持たず、ひどい仕打ちを受けても何も感じないで周りに合わせようとするでしょう。 ACの人たちの心は、コンピュータでいえばバグがあるということで、プログラムを書き換えたり、フォーマットし直せば修正できるということです。 ACというのは病名ではなく、気付きの言葉です。それに対してPTSDというのは病名で、いわゆるトラウマのことです。その症状は、子どもの頃の辛いことが悪夢として蘇ったり、かつてあぶない目に遭ったことを再現してしまったりします。トラウマは、人の心の九十%を占める無意識の領域に巣くう寄生虫のようなものです。その寄生虫を退治する方法には、次のような三つの段階があります。 1)治療教育……自分の本当の傷を抑圧しないで見つめること。 2)開示……気付いた自分の傷について、話をすること。 3)自助グループ……同じ悩みをもった人たちとその悩みを共有して、未来を切り拓いていこうとすること。 ころねっとセミナーでの三回の講演も、この三段階に合わせて話をする予定です。 ACには、はっきり過去の傷が分かるタイプのACと一見穏やかで、何が傷か分からないタイプのACがあります。前者はアメリカ合衆国に多く、わが国では後者のタイプが多いようです。有名な喩えで「魂の纏足(てんそく)」という言葉がありますが、いずれのACも、大人になってから自分の足で歩けない人たちです。それは、幼少時からの価値観の刷り込みによるものです。子どもに対する社会からのプレッシャーを、家族がバリアになって和らげなければならないのに、家族が社会と一緒になってプレッシャーをかけているということも考えられます。 皆さんは、キツネ憑きの話を知っていますか。キツネが憑いたといっていじめられたわが子に対して、「それなら、父さんも母さんもキツネになるから、キツネの親子として一緒に暮らせばいいじゃないか」と親が答えたというお話です。この話には、親が世の中から子どもを守る姿が端的に描かれています。これは童話ですが、示唆に富んだ話だと思います。 |
(文責・編集部) |