
| 第十五回ころねっとセミナーは、中日新聞生活部記者であり、SHARE(日本自閉症協会愛知県支部ニューズレター)、CAPNA(子どもの虐待防止ネットワーク・あいち)、ASK(アルコール問題全国市民協会)など様々な場面で活躍されている安藤明夫先生を講師にお招きして、六月一三日に女性会館で開かれました。今回のテーマは「虐待とトラウマ」です。 |
| わたしの両親は教師だったので、「勉強できて当たり前」と言われたり、自分の好みを押し付ける母親に、少年時代は窮屈さを感じていました。社会部の記者や、中日ドラゴンズ担当記者のころは、一年の半分は家にいないような状態でしたが、長男が自閉症という障害を持っていることが明らかになったころから、福祉や医療問題に取り組みたいと思うようになりました。その後、生活部に移ってから、消費者問題、とくにマルチ商法を取材するなかで、弱い人の立場が損なわれていると感じるようになりました。子どもの虐待防止活動に引き込まれていったのには、以上のような自分自身の経歴やお祭り人間的性格が関係しています。 子どもの虐待は、せっかんなどの「身体的虐待」、言葉の暴力や無視などの「心理的虐待」、「性的虐待」、育児の放棄、怠慢の「ネグレクト」に分類されます。他に、発作的な殺人や無理心中もあり、年間百人ぐらいの子どもが亡くなっています。 わたしは一九九四年に「母と子のSOS」という記事を書きましたが、それを読んだ、静岡県の三四歳の男性から手紙をもらい、会って話を聞きました。彼の父親は世間的には立派な人でしたが子ども嫌いでしたし、母親は冷たい人で、彼は身体的虐待・心理的虐待を受けて育ちました。小・中学校時代は夜尿症に、高等学校以後は過敏性腸症候群、心因性眼痛、腰痛、頭痛などの身体的症状に悩まされました。大学卒業後カナダへ留学させられ、帰国後、父親の知人の会社に病気を隠して就職させられましたが、病気がわかると解雇され、その後、入退院を数回繰り返しました。友人の歯科医のところで仕事をするようになっても、友人は彼のことを評価してくれるのですが彼は自分に自信がもてず、三ヶ月でうつ病になり精神科へ。彼は、三四年間出口のないトンネルの中にいるような気がしていると語りました。この人は外面的には恵まれていますが、心理的虐待を受けて育ちました。心理的虐待は傷が残らないから分かりません。虐待者は外づらが良いことが多いのです。 継父から性的虐待を受けた少女は、十五歳の時、自殺未遂をしました。母親の離婚調停のときに、裁判所で遠くに継父の姿を見かけただけで、体が凍りつき涙が出てきました。それほど虐待は心に傷を残すのです。 また、親が先回りして子どもの自立の足を引っ張ることも、一種の虐待と考えても良いのではないでしょうか。ふだんは問題なく生きていても、何かことが起きると弱い人にストレスの矛先が向かいます。心の傷を持ったまま親になって、ストレスがたまりやすい人が子どもを虐待してしまうということもあります。この悪循環を断つためには情報が大切で、自分の生活の危機管理、すなわち大変なことにぶつかった時にどう対処していくかを学習することが必要なのです。 |
(文責・編集部) |