ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第21回セミナーだより
 第二十一回のころねっとセミナーは、臨床心理士の西野敏夫先生を講師にお招きしました。西野先生は以前にもころねっとセミナーにお招きしたことがあるので、ご存じの方も多いと思います。心に傷や悩みをもつ人が共感できる西野先生のお話は毎回好評を得ています。西野先生のお話は新年一月にも予定しています。今回聞き逃した方は、次回、是非お出かけください。今回のテーマは、「回復への道・私の場合」です。
 何か問題が起きたときに、どうしてこうなってしまったのかということを、本を読んだり、頭で考えたりすることが多いのですが、それだけでは分かったつもりになるだけで、本当に分かることとは違います。「本当の私」とか「自分を大切にする」という言葉は耳ざわりがいいのですが、理屈ではなく感覚的に言うとどういうことなのかをお話したいと思います。
 私の父は、素面(しらふ)でも暴れることがありました。チャンネル争いをしていて、買ったばかりのテレビを捨てられたことがあります。教科書を捨てられたり、ちゃぶ台をひっくり返されたりしたこともあります。雪の中に埋められたこともあります。簡単に言うと、私は被虐待児でした。実は、そのことに気づいたのは随分あとになってからで、そのときは自分も結婚していて、子どもがいました。その頃、世の中でACが話題になり、自分の問題とリンクしていることに気がつきました。
 理由がはっきりしないのに父親が暴れる……それが続くとどうなるか分かりますか。いつもびくびく、おどおどして、感覚が鋭くなるのです。そうした人間は、周りの人を不愉快にします。家庭で受けた体験を外でも呼び込んでしまうのです。そのうちに、私はノイローゼ(神経症)になってしまいました。私の症状の中心は、不潔恐怖と確認恐怖です。手を洗い続けたり、戸締まりやガスの元栓のことが気になったりして、学校へ行けなくなってしまったこともありました。それから、お腹がゆるくて、よくトイレに行っていました。今、考えると、過敏性大腸炎、要するに下痢だったと思います。そのきっかけはストレスかもしれませんが、なってしまうと症状だけが残ります。社会人になってからのことですが、一ヶ月ぐらい下痢が続き、ものが食べられなくなり、入院したことがあります。入院中は、かなりたくさんの安定剤を服用しましたが、過敏性大腸炎には効かないのです。
 自分がノイローゼだという自覚はないのですが、何とかして強くなりたくて、体を鍛えることにハマりました。中学時代は「柔道一直線」がはやっていて、柔道部に入りました。大学ではウエートリフティングをやっていました。ハマっていたのでそこそこの成績をあげていたのですが、自分の限界以上にがんばってしまうので、結局、体を痛めてしまいました。アディクションもこれと同じだと思います。
 自分がこんな風になってしまったのは父親のせいだと思っていました。だから、父親のようにはなりたくないと思っていたのに、自分の子どもを殴るようになっていました。父親が亡くなる前に入院していたのですが、ベッドの上で何もできないはずなのに、父親が怖くて病室には居られませんでした。父親の死に目に会えなかったことは後悔していませんが、殴り合いの大げんかを一度してみたかったです。
 回復ということを考えると「すっきり、さっぱりする」ということはあり得ないと思います。少しずつ楽になり、何か問題を抱えていても生きられるようになるのでしょう。「自分らしさ」というものがどこかにあって、それを追い求めていくと、「自分らしさ」から遠ざかってしまいます。だれかの真似でなく、自分流が大切です。また、理屈でなく、感覚的なものに焦点を当てることが大切です。
(文責・編集部)
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