ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第33回セミナーだより
 第三十三回のころねっとセミナーは、あるく相談室室長でソーシャル・ワーカーの小寺明美先生をお招きして、パネル・ディスカッションを行いました。昨年九月のパネル・ディスカッションが好評だったので、再び小寺先生をパネラーに迎え、開催することになりました。今回のテーマも前回同様、「自分を変える、関係を変える」です。
1.体験発表・Aさん(四十代・女性)

 四年八カ月前が、私の最悪状態でした。当時、高校生の二男と三男が不登校で、夫は家庭には無関心でパチンコばかりしていました。そのころ、たまたま知り合いに愚痴をこぼしたら、その相手が「Be!」という雑誌を紹介してくれました。そして、「Be!」を読み始め、ASKというグループともつながりができました。
 はじめはASKのミーティングでも、メモを読むのがやっとでしたが、どんな話をしてもASKのメンバーは受け容れてくれました。ふだん親しく付き合っている人たちは、私の話を聞くと責めるようなことを言うのですが、ASKのメンバーは違っていました。
 その後、ミーティングに出たり、講演を聞いたり、本を読んだりしてきました。そして、S・ジョンソンのワークに参加して、理屈ではなく実感として、自分のインナーチャイルドに出会うことができました。
 今は、本当に困ったときに話を聞いてくれる仲間が全国にできました。語ることで様々なことに気づき、自分が回復することが、子ども達にもよい影響を与えることができると信じています。

2.体験発表・Bさん(三十代・男性)

 私の父はアルコール中毒で、家庭ではしらふでいる姿を見たことがほとんどありません。母は周囲の人たちを支配していないと気がすまない人間で、自分の思想(@学歴・肩書き尊重の権威主義、A自分以外の女性蔑視)を人に押しつけ、少しでも反発すると罵声を浴びせてきました。
 父と母は、いつも喧嘩をしていました。食事中も怒鳴り合っていて、私の家庭には安らぎがありませんでした。私は、なぜ両親が離婚をしないのか不思議でした。
 そんな家庭で、私は身体的虐待はあまり受けていませんが、精神的な虐待を受けてきました。よい成績をとっても当たり前で、ほめられたことがありません。自分に自信がないので、会社で上司がほめてくれても、それが素直に信じられないのです。
がんばり続けて、無理をしていたために、コーヒーやドリンク剤、頭痛薬などカフェイン依存の状態になりました。仕事などで、他人の仕事まで引き受けてしまい、そうした自分に腹を立て、蓄積した怒りが爆発したこともありました。五年前に結婚しましたが、一年ほどで離婚しました。私の育った家庭は、お金と支配関係だけでつながっていたので、私はそんな家庭だけは絶対に嫌だと思っていました。ところが、私が結婚した相手の女性は自分の母親と同じようなタイプだったのです。
 一年前に自分がACだと気づきました。そして、ジェイカを知り、クリニックに通ったり、「ころねっと」のホームページを見つけたりしました。IFFの関係するセミナーに参加したり、本を読んだり、自助グループに参加したりして、自分に合ったことをぼちぼち続けてきました。はじめは、自分のされたことを話したくて仕方がなかったのですが、最近は落ち着いてきました。自分に自信がついてきて、会社でも自分の怒りを少しずつ出すことができるようになってきました。

3.感想およびコメント・小寺先生

 「アダルトチルドレン」(AC)という言葉が五年前にブレイクして、その後五年たった現在、見えてきたことがあります。最近、児童虐待が話題になっていますが、その心理的虐待について逃げ腰だった専門家に対して、ACの発言によって流れが変わったということがありました。 
また、ACの問題を解決するには「中立」の立場ではかかわれないということもはっきりしてきました。「中立」というのは被害を受けた側ではなく、権力を持った側に立つからです。ACの問題を「自己愛」…自己病理の問題として解決しようとしてきた精神医療の問題が明らかになったと言えるでしょう。
 Aさん、Bさんもそうですが、ACの人たちは、ほかに選択肢がない状況で生き抜いてきました。その結果、親に期待された自分を演じ、親の価値観に縛られしまったのです。楽に生きていくためには、失敗をくり返し、そこから何かを学び取っていくことが必要です。ところが、ACの多くは極端に失敗を恐れるのです。それは、叱るだけ叱られてほっておかれた過去の体験から抜け出せないでいるからでしょう。
 今、アメリカ合衆国では、ブッシュとゴアが大統領戦で争っていますが、アメリカは勝った者だけの、一番でなければ価値がないという国です。家庭がそんな権力構造の場だったとしたら、人としてまともに育っていけません。自分がだめになってしまうのは明らかです。ACは、そういうことにも気づかせてくれました。Bさんの場合、思想的に親が作った檻に閉じこめられていたのですが、大人になって檻がなくなっても、そこから出るのが難しかったわけです。
 「問題」が「問題」であって、「問題」と「人間」はイコールではありません。アメリカ大統領戦のように結果至上主義ではなく、敗者がやり直すことができることを教えてくれたのもACなのです。

4.セミナー参加者のアンケートから

  • 中身の濃いパネルディスカッションだったと思います。Aさん、Bさん、ありがとうございました。
  • ありのままを語っていただき、自分の中にあるものと照らし合わせて聞きました。
  • 体験談を聞くことができ、とてもよかったです。自分はダメ人間だっていう考えが出てきたところなので、ちょっとほっとしました。よかったです。
  • パネラーの方のお話を聞いて、自分の子どももあのように、親のことをものすごく心配しているというか、とらわれているのかなあと思いました。子は自分のことだけを考えて、回復のことを考えてほしいと思いましたが、親へのこだわりと、私の子どもへのこだわりとが同じなんだなと気づきました。これが、共依存かなと思いました。
  • 活発な意見が聞けてよかったと思っています。でも、ACができることをもう少したくさん聞きたかった。選択肢の増える話をしてほしかった。

(文責・編集部)
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