ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第35回セミナーだより
 第三十五回のころねっとセミナーは、スクールカウンセラーの平田好実先生を講師にお招きしました。平田先生は、かつて精神科のクリニックでカウンセリングのお仕事にも取り組んでみえました。今回のテーマは、「大人の発達心理学」です。
 以前は発達心理学というと、子どもだけを対象として考えられてきたようですが、今では子どもだけでなく、大人も「発達」するととらえられるようになりました。「発達」というものを子どもが大人になる過程としてだけとらえるのではなく、人間の全生涯について考えるようになったのです。
 「発達」というものは、新しいもの、今までになかったものが表れることですが、それは持っていたものを失うということでもあるのです。その「消失」というのは、新しいものを獲得する前提条件となるものです。
 では、何が「発達」の条件となるのでしょうか。それは、過去の経験だという考え方、見方があります。たとえば、乳児期の母親との関係が、その後の発達に大きな影響を及ぼすというようなことです。今は、そうした考え方が強調されすぎているように思います。同一の経験であっても、それを当人がどのように受けとめたかが重要であって、客観的な事実だけによって決まるわけではないのです。
 一般的に幼い子どもほど、外部からの刺激に反射的に反応して、当人が行為を主体的に選択する度合いは小さいでしょう。
親の言うことに従順だった子どもが、二、三歳になると自分でできそうもないことまでやろうとすることがあります。いわゆる反抗期です。それをそのときだけの現象でとらえれば、破壊的な行動になりますが、発達的な視点に立って将来的に考えれば、自立の兆しだといえるでしょう。
 過去の経験を振り返って、自分はどのように行動すればよいかという考えから、欧米で心理学が生まれました。そして、その考えが普遍的な考えとして広がってきました。しかし、今まで一般的だと考えられてきた法則や原理が、アフリカや南米の諸国であてはまらない事例がたくさん見つかるようになりました。それらは、「発達」にかかわる社会的な条件が異なることによります。言い換えれば、子どもを社会のメンバーとして、どのように位置づけるかということです。また、時代が移り変わり社会が変化すると、人の発達の仕方も変わります。ですから、これまでの心理学の成果が、すべてに当てはまるわけではないのです。
 わが国の場合、寿命が延びて、子育てが終わってからの人生が随分長くなったり、核家族化が進み、かつての性的役割分業が成立しにくくなったりしたため、家族の在り方が不安定になっています。その不安定さは、妻、そして子どもに大きく表れています。性の違いよりも、それぞれの人の持ち味を生かせるような社会になるといいのですが、今は過渡期のようです。
 仕事に追われて身辺自立のできていない夫が、熟年離婚を迫られるということが話題になっています。「自立」ということが大切だと思います。自立した者同士が互いに支え合うことにより快適な暮らしができるのです。自分が抱えている生きづらさから解放されるためのヒントもそこにありそうです。今までの関係が変えられないと思い込む必要はありません。自分が大人になっていれば、自分で生き方が選べるはずです。

(文責:編集部/講演日:2001年 2月11日)
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