ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第39回セミナーだより
 第三十九回のころねっとセミナーの講師は、フェミニストカウンセラーの梅村政子さんです。二人の講師のリレーによる、今回からの四回シリーズの流れのなかで、梅村さんともう一人の講師にそれぞれ二回づつころねっとセミナーを担当していただく予定です。第一回目のテーマは「自分を知るパートT―家族のなかのわたしを考える―」です。
 フェミストカウンセリングは、カウンセリングのなかにフェミニズムの視点をとり入れているところに特徴があります。いろんな問題を抱えた方がカウンセリングにお見えになります。お互いは対等な立場ですが、専門的な知識をもっている者としてお話を伺っています。ですから、「〜先生」ではなく、「〜さん」と呼び合える関係でありたいと考えています。
 今回の話は、「家族のなかの自分」を考えるきっかけになればと考えています。「家族のなかのわたし」はどういう位置づけにあるのか、どういう立場で家族のなかに存在しているのかということです。
 近年、少子化・高齢化は緊急の政策課題として捉えられています。子どもの問題(子どもの虐待、不登校、引きこもり、家庭内暴力など)やおとなの問題(夫婦関係)、様々な問題がありますが、最近は離婚率も高くなり、家族の形態そのものが劇的に変化している状況にあります。従来の心理治療においては問題の発端となった個人に焦点が当てられてきましたが、一九八〇年代に出てきた家族心理学は、家族をテーマにしています。本人のみならずその人の属する家族を見ていこうという考え方で、@メンバー間の互いの関係を焦点づける、A個人を理解するためにその家族を理解し援助する、B家族の関係は一方的にではなく円環的につながっている、との三点を基本として考えられています。フェミストカウンセリングでは、これらに加えてジェンダーの視点が欠かせないと考えています。ジェンダーとは「男らしさ・女らしさ」という言葉で代表される社会的・文化的な性差のことです。ジェンダーは女性だけの問題ではなく男性の問題でもあります。わたしたちはこれまで役割とパターンで生きてきて、それによって評価されてきたわけですが、女性である自分、男性である自分、いい子である自分という役割は、個人でありたい自分をかなり抑圧してきたのではないでしょうか。
 また、社会の動きにつれて家族のかたちが変化してきたことも忘れてはならないことです。女性はこれまでのあり方を否定され、生き方そのものに変化を求められ、男性は仕事の細分化や情報化により年数を重ねることによって熟練工になっていく時代ではなくなってきたので、自分がどう生きていけばよいのかということがあやふやな時代になってきています。たとえば、成人―結婚―子どもの誕生―子ども独立―二人家族―老年期というパターンがあります。これまでは家族のなかでの役割を生きていればよかったのですが、最近は子どもの独立以降の時代が長くなってきたために、老年期を夫婦二人でどう生きていくかということを自分たちで考えざるをえなくなりました。家族の外側のかたちの変化につれて、家族の内側も変らざるをえない状況になっています。
 これまでは、家族というかたちのないものへの幻想があったわけですが、家族のなかの個人というわたしの生き方を家族それぞれが考えなければならない時代です。個人の自立があって、初めて家族の自立があるのではないでしょうか。家族のなかの力関係を意識にのせてみることは大事なことです。前回のころねっとセミナーで講師が話されていたように、それを文字や図に表し、もう一度目に見えるかたちにしてみることは有効な作業だと思います。

(文責:編集部/講演日:2001年 6月10日)
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