ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第46回セミナーだより
 新年初めてのころねっとセミナーは、当会発足以来の常連の講師である西野敏夫先生をお招きして、「アダルトチルドレンは今・パート1」というテーマでお話をうかがいました。
 この「こころのネットワークあいち」ができてから五年たったそうですが、五年前はアダルトチルドレン(AC)という言葉を使うとたくさんの人が集まりました。それだけ世の中の関心を集めていたわけですが、近ごろはACに対する関心が薄れてきて、病院に来る人もACという言葉を使わないで、「うつ」とか「摂食障害」とか、具体的な症状について訴えてくるようになりました。
 ACは、アディクションから出てきた問題です。アディクションの問題となるものは、「アルコール」「薬物」「ギャンブル」「仕事」「摂食障害」「暴力」「うつ」「パニック」「リストカット」「恋愛」「SEX」「引きこもり」「解離性障害」「人格障害」など様々です。表れ方は違っていても、これらに共通しているのは対人関係です。そのもとになっているのは「不安」や「恐れ」で、原因は成育歴や家族関係にあると思われ、そのつながりを見つけるのにACの概念はたいへんに役立ちました。
 当時、多くのACの人たちは、はっきりした症状はないものの「何か足りない」、「何か変だ」というような気持ちを感じていました。それらの人たちは、ACの概念から手がかりをつかんだような気がしたのでしょう。「今の自分は本当の自分ではない」、「どこかに本当の自分がいるはずだ」と「自分探し」を始めた人もたくさん見られました。しかし、いくら自分探しをしても、本当の自分に出会うことができず、不全感にとらわれてしまう。その結果、また、納得できないまま生きていくことになる。そうしたことの先棒かつぎのようなことを私たち精神医療の関係者がしてきました。
 「自分らしさ」とか「本当の自分」というのは、耳障りがいい言葉です。でも、自己実現ができるのは、ほんの一握りの人で、ほとんどの人はできません。けれど、できなくても全く差し支えないのです。自己実現と幸せとは別問題なのです。
 生きていくのに目的はなくていいのです。ただ、生きていればいい。メシ食って、寝て、ウンコして、だれかと楽しくおしゃべりできれば、それで十分。あとはオマケです。
 かつて、ACだといって、たくさん悩んできた人たちが成長して、「あの苦しさは何だったのか」と振り返るようになりました。でも、苦しんだことは無駄にはなっていません。いいことも悪いことも、自分の身に起こることは、すべて自分にとって必要なことばかりです。「時間」は、必ずその人の味方をしてくれます。最後には、うまくおさまるところにおさまると思います。

(文責:編集部/講演日:2002年 1月20日)
▲議事録もくじへ


内容の無断利用・転載などはご遠慮ください。
(C) 2002 こころのネットワークあいち