ころねっとセミナーだより 〜セミナー議事録〜

第53回セミナーだより
 第53回のころねっとセミナーは、「あるく相談室」を主宰されているソーシャルワーカーの小寺明美さんに、「相談室から見た現代家族」というテーマでお話をうかがいました。
 私は大学を卒業後、精神医学ソーシャルワーカーとして医療機関で働いてきました。そして、平成七年に「あるく相談室」を開きました。その頃、AC(アダルトチルドレン)ブームが起きました。ACの人たちは、本来なら適応しなくてもいい問題に過剰に適応してきたために、自分を見失ってしまいました。その概念は一九九〇年にアメリカから伝わってきたのですが、その後のACブームで家族問題を広く一般に知らせることになりました。それまでは、家族問題は聖域として他人が踏み込むことを許しませんでしたが、家庭には暴力によって弱者を支配する関係が存在することが明らかになり、今では児童虐待やドメスティックバイオレンスの問題が大きく取り上げられるようになりました。しかし、現在はそれぞれの家庭が密室化して、そこで起きていることが外から全く見えない状況にあります。
 では、どのようなことに配慮すると家族はうまくやっていけるのでしょうか。家族の形態はたいへん多様化していますが、子どもがいる場合、子育てが家族機能のポイントだと思います。子どもというのは手がかかるとともに弱い存在ですから、力のある者が暴力を振るったり、精神的に責めたりすることがあります。そうしたことを踏まえて、子どもを養育するときの三つのキーワードを私は考えました。
 その一つ目は、「会話すること」です。子どもの話にじっくり耳を傾けることです。会話を避けている親が多いように思います。それはとくに父親に目立ちますが、だれかを仲介者にして子どもに何かを伝えようとしても駄目ですね。本人と実際に向き合って話をすることが大切なのです。また、親は自分の考えを子どもに押しつけるのではなく、「私は、こう思う」というように一人の人間として、自分の思いや考えを伝えるようにすることです。そこから、親も子も互いに認め合い、信頼関係が生まれると思います。また、雑談も大事です。冗談を言い合うこともいいですね。日常生活の中で笑うことは欠かせません。
 二つ目は、「信じること」です。親に信頼されている子は、親の信頼を裏切るようなことはしないと思います。しかし、世間で言われていることに惑わされ、わが子が信じられない人たちがいます。しばらく前に、引きこもりの青年が傷害事件を起こしたことがありましたが、すべての引きこもりの人たちが犯罪を起こすわけではありません。もし、自分の子どもが信じられないとしたら、それはなぜかということを考えてみる必要があります。一つ目でお話したように、日々会話があれば、子どもの考えていることも分かるはずです。
 三つ目は、「手を離すこと」です。子育てというのは徐々に別れていくプロセスです。子どもは自分自身で自分を育てていく側面があります。子どもの成長に合わせて、手出し、口出しを減らしていくべきです。そのとき大切なのは、放任ではなく「見守る」ことです。親が子離れできないと、子どもの抱えている問題を長引かせることになります。それは、アディクションを支える共依存の関係と同じです。「愛情」という言葉に惑わされないで、親子関係も一つの人間関係なのですから、他者に対する尊重と配慮が必要なのです。
 子どもが生まれたら、だれでも「親」になるわけではありません。家族の関係も意識的に築いていくものだと思います。

(文責:編集部/講演日:2002年 8月)
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